【障害福祉】就労移行支援

就労移行支援は、企業などへの一般就労を目指して、原則最大2年間の生産活動や職場体験などの提供を行い、就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練、就労に関する相談や支援を行うサービスとなります。

就労移行支援は、利用者の一般就労を目指すサービスであるため、他の障害福祉サービスとは少し趣の異なるサービスとなっています。

サービスの内容

就労移行支援は、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートを行うサービスであるため、就職に必要な知識や社会スキルの向上についてのカリキュラムがあることが前提となってきます。

ビジネスマナーやコミュニケーションなどの対人スキルを基礎として、事務作業、パソコンスキルの向上、簿記、資格取得、健康管理など複合的に訓練することになるでしょう。

また、企業実習についての実習先の確保や障害者就業・生活支援センター、ハローワークなどと連携し、就職面での支援を行うことも重要となります。

利用対象者

サービスの利用対象者は次のとおりとなっています。

  • 障害のある方で企業などで働くことを希望している18歳~65歳未満の方
  • 会社等に雇用されている障害を持っている方で以下の場合の一時的な支援
    〇労働時間延長支援型 労働時間の延長を目指す
    〇復帰支援型 給食からの復帰を目指す
    〇就労移行支援短時間型 おおむね週10時間の短時間労働を行いながら就労移行支援を利用する

就労継続支援A型については、特に利用期間・利用期限などは定められていませんが、就労移行支援については原則2年の期限が設けられています。

また、就労移行支援、就労継続支援A型事業ともに、年齢制限(原則18歳~65歳未満)が定められているので注意が必要です。

就労移行支援事業の指定基準

就労移行支援事業を行うためには、管轄の自治体から障害福祉事業者としての指定許可を受ける必要があります。

指定申請を行うための基準としては、法人格、人員基準、設備基準、運営基準の4つの要件を満たす必要があります。

法人格 人員基準 設備基準 運営基準

では、それぞれの要件についてくわしく確認していきましょう。

1.法人格

障害福祉サービスを行うためには、法人格があることが大前提となっていますので、就労移行支援事業についても、法人格が当然に必要となります。

法人格としては、株式会社や合同会社、NPO法人、一般社団法人などからもっとも自分の事業形態にあう法人格を選択することになり、定款の事業目的には、障害福祉事業の目的のみを記載し、それ以外の事業目的を記載しないようにする必要もあります。

事業目的には、「就労移行支援事業」を行う旨の内容を記載しておく必要がありますが、限定して記載した場合は、その他の障害福祉サービス事業を行う際に、事業目的の追加が必要となってしまいます。

もっとも事業を広く取り扱える表現としては、

  • 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律に基づく障害福祉サービス事業

などが一般的です。

障害福祉サービス事業という文言には、就労移行支援、就労継続支援A型、B型、共同生活援助、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護などの主な障害福祉サービスを含む表現となっています。

また、障害者総合支援法というのは、正式名である「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する法律」の略号なので、正式名でしっかりと記載するように指示する自治体もあります。

事業目的は決定する前に必ず管轄の自治体に確認しておいたほうがよいでしょう。

2.人員基準

管理者

管理者は事業所の施設長にあたる方を配置します。

常勤で1名以上の配置が必要となります。

原則として、サービス管理責任者、職業指導員、生活指導員との兼務も可能ですが、自治体によっては管理者と職業指導員、生活支援員との兼務は認めていない場合もあります。

申請を予定する自治体へかならず事前に確認しましょう。 管理者になるために必要な資格や責務は次のとおりとなります。

従事内容
  1. 事業所の職員及び業務の管理その他の管理一元的に行うこと。
  2. 事業所の職員に基準等を遵守させるために必要な指揮命令を行うこと。
資格要件 常勤1人以上を配置し、以下のいずれかの要件を満たす方

  • 社会福祉主事資格要件に該当する者(社会福祉士、精神保健福祉士等)
  • 社会福祉事業に2年以上従事した経験のある者
  • 企業を経営した経験を有する者
  • 社会福祉施設長認定講習会を修了した者

サービス管理責任者

通称「サビ管」といわれるサービス管理責任者は、障害福祉サービスの提供に関わるサービス管理を行います。

具体的には、利用者のアセスメントの実施、個別支援計画の策定・評価、サービス提供のプロセス全体を管理することになります。

従事内容
    1. 個別支援計画の作成に関すること。
    2. 利用者の心身の状況、当該事業所以外の指定障害福祉サービスの利用状況等を把握すること。
    3. 利用者が自立した日常生活を営むことができると認められる利用者に対し、必要な支援を実施すること。
    4. 他の従事者に対する技術指導及び助言を行うこと。
資格要件 常勤1人以上を配置し、以下のいずれの要件も満たす方

  • 障がい者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における直接支援・相談支援等の業務における実務経験が3~10年
  • 相談支援従事者初任者研修(講義部分)受講及びサービス管理責任者研修修了

また、サービス管理責任者になるためには、実務経験と研修の受講が要件となっています。

研修の受講は必須ですが、有資格者・国家資格者・資格がない場合で、必要な実務経験年数が異なっています。

サービス管理責任者になることができる有資格・国家資格は次の表のとおりとなっています。

有資格 社会福祉主事任用資格、実務者研修修了者(訪問介護員2級以上)、児童指導員任用資格、保育士、精神障害者社会復帰施設指導員任用資格者
国家資格 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士(管理栄養士を含む)、精神保健福祉士

有資格者・国家資格者・資格なしのケースに応じて、必要な実務経験年数は次の通りとなっています。

実務経験 研修受講
相談支援業務 直接支援業務
  • 相談支援初任者研修(2日以上) かつ
  • サービス管理責任者研修

資格なし

  • 5年かつ900日
  • 8年かつ1440日

有資格

  • 5年かつ900日
国家資格
  • 3年かつ540日 かつ 国家資格による業務に3年以上従事

サービス提供職員(職業指導員と生活支援員)

職業指導員と生活支援員をそれぞれ1人以上配置し、そのうち 1 人以上は常勤でなければなりません。

常勤換算で、利用者の数を 10で除した数以上(10:1)の配置が必要となります。

従事内容
  1. 生活支援員は利用者の生活上のサポートを行い、職業指導員は就業に際して必要な技術を指導します。
資格要件
  1. 職業指導員、生活支援員ともに必要な資格等はありません。
  2. 職業指導員、生活指導員を各一名以上配置し、一人以上は常勤とします。

3.設備基準

物件の要件確認

施設として利用予定の物件について、必要とされる要件は、自治体ごとに取扱いが異なっています。

A自治体では不要とされた要件が、B自治体では必要とされるなどがありますので、必ず申請先となる自治体へ事前の要件確認を取るようにしましょう。

主な要件としては、

  • 少なくとも「建築確認概要書」が発行される物件であること(「確認済証」「検査済証」まで必要とする自治体もあります。)
  • 都市計画法上の用途地域に制限がないこと
  • 自治体が定めるバリアフリー条例などに違反していないこと
  • 消防設備について消防署の確認が取れていること(防火対象物開始届、社会福祉施設相談票の届け出など)
  • 耐震性の確保に努めていること

などの要件を満たす必要があります。

物件を確定する前にいろいろと調査する必要がありますが、「建築確認概要書」が発行されるか?バリアフリー条例などに適合しているか?消防設備の設置の必要性や「社会福施設相談票」「防火対象物開始届」の提出が必要かどうか?などについては真っ先に調査しておいたほうがよいでしょう。

耐震性の確保について
耐震性の確保については、自治体ごとに特に取扱いが異なっている項目の一つとなります。 京都市の場合であれば、昭和56年6月1日以降に着工されている物件であれば、耐震性は確保されているとみなされますが、それ以前に着工された物件となると、大規模な耐震改修工事などが必要となるなど、事業所候補地としては現実的ではありません。

  • 平成27年7月1日以降、事業所及び施設を新しく開所又は移転する場合は、耐震性を有する建築物での事業実施を必須とされています。
  • 平成27年7月1日以前に既に事業を開始している事業所及び施設においては,耐震性の確保に努めなければならないこととされています。
  • 「耐震性を有する」とは,次の1.2.のいずれかをいいますが、2.については耐震工事が必要となるなど、多額の費用が発生するなど現実的ではありません。
    1. 昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手していること。(工事着工日は建築確認概要書で確認できます。)
    2. 昭和56年5月31日以前に新築の工事に着手したものにあっては,耐震診断報告書において耐震性を有することを確認していること又は耐震改修工事等により耐震性を有していることを確認していること。

自治体の建築課などで発行される「建築確認概要書」、自治体と協議の上発行される「バリアフリー協議書」、消防署の指導・実地調査のもと発行される「社会福施設相談票」「防火対象物開始届」などは、多くの自治体で必要となる書類です。

物件の広さの確認

就労移行支援事業の最低定員は10名以上となっています。
※令和6年度報酬改定で、最低人員が20名から10名に変更されました。

作業訓練室は、利用者1名あたりの最低㎡数が定められていますので、必要な㎡数の訓練室を確保し、その他の相談室、事務室、静養室などを別に確保する必要があります。

事務室

事務机、事務機器、パソコンなどの他、重要な書類を保管するための鍵付きの書庫などが必要となります。

相談室

室内における談話の漏えいを防ぐための措置を講じることが必要となっています。

個室として相談室を設ける場合は、特に問題はないと思いますが、事務室と同室とするような場合は、事務室と相談室を区分するためのパーテーションの設置などが必要となってきます。

また、パーテションの高さは、180cm程度の高さが必要とされています。

訓練作業室

訓練作業などに必要となる器具や備品を備え、利用者へのサービス提供に支障がない広さの確保が必要となっており、利用者一名あたり最低3.0㎡が必要とされています※自治体によって異なっており、2・47㎡でよいとされる自治体などもあります。

利用者10名の場合、作業訓練室だけで30㎡の広さの確保が必要となります。

自治体によっては、移動不可能な備品、例えば書棚などを差し引いての30㎡の確保が必要とされるところもあるので注意が必要です。

その他

トイレ、手洗い、洗面所のほか、多目的室や静養室など、利用者の特性に応じて設置するようにしましょう。

トイレ、手洗い、洗面所には、ペーパータオルと消毒などの設置も必要となってきます。

4.運営基準

マニュアル等の設置を行い、法令や条例に定める運営に関する基準に従って適正な事業運営を行う必要があります。

設置すべき規程やマニュアルは次の書類などがあります。

  • 運営規程
  • 重要事項説明書
  • 衛生管理・完成症予防マニュアル
  • 緊急時対応マニュアル
  • 苦情処理対応マニュアル
  • 研修マニュアル
  • 事故発生マニュアル
  • 身体的拘束等適正化のための指針
  • 個人情報の利用目的
  • 業務継続計画 など

指定申請の流れ

次に、指定申請をする際の手順についてご紹介します。

  • 事前確認 人員基準や設備基準などの指定基準を満たしているか、事前に確認しながら準備をおこなう必要があります。 本申請を行なう時点では必ずしも従業者の雇用が開始している必要はありませんが、人員の配置には目途が立っている状態にしておきましょう。 設備基準については、事前相談の際には、事業所情報を提示する必要がありますので、設備基準を満たしているかどうかを慎重に確認しましょう。

  • 申請書類の作成と添付書類の収集 自治体ごとに様式が異なっていますので、申請する自治体の様式を確認し書類を作成するようにしましょう。 あわせて、勤務先(前勤務先)などに依頼が必要な実務経験証明や行政機関から取得する登記簿謄本などの添付書類を収集します。 申請書類に不備などがあると申請が受理されない場合もあります。

  • 事前相談と本申請 自治体ごとに事前相談・本申請の取扱いは異なっていますが、多くの自治体では、事前相談を行ったうえで本申請を行うという二段階の申請となっています。 この期間に補正などを指示されることもあります。 補正などの修正が遅れると、指定許可日が遅れてしまうこともありますので、迅速に対応するようにしましょう。

    • 面談若しくは実地調査 実地調査は、各自治体ごとにある場合とない場合があります。 面談や実地調査については、次の書類の提示などが必要となります。 ・雇用契約書 ・資格者証の原本 ・各種マニュアル関連 など

  • 指定許可通知 指定許可がおり、指定番号が振り分けられれば、営業を開始することができます。

指定申請の注意点

  • スケジュールの管理 指定許可までは、約2~3カ月かかるため、 指定予定日に指定許可が取得できるように人員の確保、設備の整備、申請書類の作成・収集を行う必要があります。
  • 様式や必要書類 同種の指定申請であっても、自治体ごとに申請書の様式や添付すべき必要書類などが異なっています。申請する自治体の定められた様式や必要書類にしたがって、手続きを進めていく必要があります。
  • 申請手順 指定申請は、申請手順も自治体ごとに異なっています。開業予定日に指定許可が取得できるように、期日を守って申請手続きを行うことが重要です。予定通りの開業を目指して、正確に手続きを行いましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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