【介護】介護予防・総合事業

介護保険法の改正に伴い、平成29年4月からスタートした制度です。

この「介護予防・日常生活支援総合事業(以下、総合事業)」は、地域全体で高齢者の生活を支えるとともに、高齢者の介護予防と自立した生活を支援する仕組みとして実施されています。

介護保険法の改正前に市区町村で行われていた介護予防事業は、介護認定が非該当となった高齢者を対象に行われていましたが、総合事業では、要介護認定の申請を行わずとも介護予防サービスを利用できる点が、これまでの介護予防事業との大きな違いになります。

要支援者と65歳以上のすべての高齢者が対象になっており、従来の介護サービスだけでは支えきれなかった高齢者にもサービスを利用してもらうことで、なるべく介護を必要としない暮らしを続けられるようにすることが総合事業の目的となっています。

総合事業の種類

総合事業は、「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」で構成されています。

総合事業は、介護保険制度の枠組みの中にある事業ではありますが、要介護者や要支援者に対する全国一律の介護保険サービスとは異なり、各市区町村が主体となって行う事業の1つです(地域支援事業)。

このため、サービスの運営基準や単価、利用料などは各市区町村が独自に設定することができるため、総合事業は市区町村の裁量の幅が広く認められ、権限が強くなっているのが特徴です。

介護予防・生活支援サービス事業

介護予防・生活支援サービス事業は、従来の介護保険制度から移行された要支援者の訪問介護(ホームヘルプサービス)と通所介護(デイサービス)と、新たに実施されている介護予防や生活支援を必要とする高齢者のための訪問型と通所型のサービスとなっています。

次に訪問型の介護予防・生活支援サービスの内容について、京都市のサービスを例に挙げておきます。

介護型ヘルプサービス
  • 訪問介護員が家庭を訪問し、身体介助(入浴や排せつなどの介助や自立支援のための見守り)または、身体介護と合わせて利用する生活援助(掃除、洗濯、買い物、調理などの日常生活上の支援)を行います。
生活支援型ヘルプサービス
  • 訪問介護員が家庭を訪問し、生活援助(掃除、洗濯、買い物、調理などの日常生活上の支援)を行います。
支え合い型ヘルプサービス
  • 介護型ヘルプサービス、生活支援型ヘルプサービスに該当しない方で、ケアプランで生活援助が必要とされた方に、生活援助(掃除、洗濯、買い物、調理などの日常生活上の支援)を行います。

一般介護予防事業

一般介護予防事業は、65歳以上のすべての方を対象とした健康づくりと介護予防のための事業となっています。

介護予防・総合事業の指定基準

総合事業を行うためには、管轄の自治体から介護事業者として指定許可を受ける必要がありますが、訪問介護とセットでの指定申請を行うことがほとんどだと思います。

指定許可の有効期間は6年間となっていますので、更新時期が来ると更新申請が必要となります。

また、指定基準としては訪問介護と同様となっており、指定申請を行うための基準としては、法人格、人員基準、設備基準、運営基準の4つの要件を満たす必要があります。

法人格 人員基準 設備基準 運営基準

では、それぞれの要件についてくわしく解説していきましょう。

1.法人格

法人格、つまり会社を設立する必要があります。

法人格があれば要件を満たすことになりますので、株式会社や合同会社、NPO法人、一般社団法人などからもっとも自分の事業形態にある法人格を選択することになります。

また、法人の事業目的にも、総合事業を行う旨の内容を記載しておく必要があります。

例としては、

  • 介護保険法に基づく第1号訪問事業
  • 介護保険法に基づく第1号通所事業
  • 介護保険法に基づく第1号事業
  • 介護保険等に基づく介護予防・日常生活支援総合事業

などが一般的ですが、決定する前に必ず管轄の自治体に確認しておいたほうがよいでしょう。

2.人員基準

訪問介護事業を行うためには、次の3種の人員を配置する必要があります。

  1. 管理者
  2. サービス提供責任者
  3. 訪問介護員

人員基準を確認する前に、修了済みの介護関連の研修によって行える業務内容やサービス提供責任者になれるかどうかが異なってきますので、以下に整理しておきます。

資格 サービス提供責任者 介護従業者(直接支援・生活支援) 介護従業者(生活支援)
介護福祉士
介護福祉士実務者研修
・旧介護職員基礎研修
・旧訪問介護員養成研修1級
介護職員初任者研修
・旧訪問介護員養成研修2級
生活援助従事者研修
・旧訪問介護員養成研修3級

1.管理者

訪問介護事業所の責任者となり、常勤で主に管理の職務に従事する方を1名以上配置する必要があります。

ただし、職務上の支障がない場合は、同一事業所内の他の職務、または同一敷地内の他の事業所の職務との兼務が認められています。

例えば、管理者とサービス提供責任者は兼務することができ、同一敷地内の訪問介護事業所と居宅介護事業所の管理者を兼務するということも可能です。

2.サービス提供責任者

ケアマネージャーが立てた介護プランを基に、訪問介護サービスの計画立案やヘルパーへの指示・指導が主な仕事です。

さらに、利用者の家族とコミュニケーションを図り、介護サービスの説明や同意を得ることも行います。

サービス提供責任者は、常勤で1名以上配置する必要があります。

利用者の人数が40人を超えるごとに1人以上の配置を追加する必要があります。

サービス提供責任者の資格要件は次のいずれかの要件を満たすことが必要です。

  • 看護師又は准看護師
  • 介護福祉士
  • 介護福祉士実務者研修
  • 旧 介護職員基礎研修
  • 旧 訪問介護員養成研修(ホームヘルパー)1級

法改正によって、実務経験3年以上の初任者研修修了者の就任はできなくなっています。

3.訪問介護員

常勤換算で2.5人以上(サービス提供責任者を含む)の配置が必要となります。

訪問介護員になるためには、次のいずれかの資格要件を満たす必要があります。

    • 看護師又は准看護師
    • 介護福祉士
    • 介護福祉士実務者研修
    • 旧 介護職員基礎研修
    • 旧 訪問介護員養成研修(ホームヘルパー)1級課程
    • 介護職員初任者研修
    • 旧 訪問介護員養成研修(ホームヘルパー)2級課程

常勤換算で2.5以上とは「従業者の勤務延べ時間数」÷「常勤従事者の勤務時間数」=常勤換算数となっており、この常勤換算数が2.5以上でないといけません。

次に各職位の配置要件・資格要件などを表にまとめておきます。

職種 配置基準 資格要件
管理者

常勤1名以上

サービス提供責任者との兼務可能

資格は不要
サービス提供責任者
  • もっぱら訪問介護の職務に従事する者を1名以上
  • 利用者が40人を越えると2人目が必要
  • 非常勤可能
    ただし常勤の2分の1以上の勤務時間が必要
  • 看護師又は准看護師
  • 介護福祉士
  • 実務者研修
訪問介護員
  • 人数 常勤換算で2.5名以上
  • サービス提供責任者を含むことができます。
  • 管理者兼サービス提供責任者の場合、管理者として従事する時間が最低0.2以上は必要、それ以外の時間は常勤換算に加算可能となります。
  • 看護師又は准看護師
  • 介護福祉士
  • 実務者研修
  • 初任者研修

3.設備基準

訪問介護事業の場合、サービスの提供が利用者宅などへ訪問するために、そこまで厳しいものではありませんが、いくつかの要件を満たす必要があります。

事務室

事務作業を行うためのスペースとして、事務室は最低7.4㎡(四畳半)の広さを確保する必要があります。

また、利用者の重要な個人情報などを保管する必要もあるため、鍵付きの書庫がかならず必要となっています。

相談室

利用者や利用者の親族などが相談に訪れる際の相談スペースの確保が必要となります。

事務室と別室であれば問題ありませんが、事務室と同室である場合には、個人情報保護のため、パーテーションの設置などが必要となります。

次の点などに注意して相談室を設置するようにしましょう。

  • 利用者の利便を考慮すると1階が望ましいものとされています
  • 上階である場合、エレベータ ーがある、職員が介助するなど、車いすを利用されている方等への対応が適切にできると認められる場合、指定を受けることは可能です。
  • 事業所の一部を区切って相談室とする場合は、プライバシーに配慮するため、パーテーションの設置が必要となります。
  • パーテーションの高さはおおむね1.8m以上のものが必要で、できるかぎり防音に配慮したレイアウトでの配置などを確保する必要があります。
  • 相談室の配置については、個人情報の保護及びサービス提供への支障などを考えて、入口付近にあることが望ましいとされています。

4.運営基準

マニュアル等の設置を行い、法令や条例に定める運営に関する基準に従って適正な事業運営を行う必要があります。

設置すべき規程やマニュアルは次の書類などがあります。

  • 運営規程
  • 重要事項説明書
  • 衛生管理・完成症予防マニュアル
  • 緊急時対応マニュアル
  • 苦情処理対応マニュアル
  • 研修マニュアル
  • 事故発生マニュアル
  • 身体的拘束等適正化のための指針
  • 個人情報の利用目的
  • 業務継続計画 など

指定申請の流れ

次に、指定申請をする際の手順についてご紹介します。

  • 事前確認
    人員基準や設備基準などの指定基準を満たしているか、事前に確認しながら準備をおこなう必要があります。
    本申請を行なう時点では必ずしも従業者の雇用が開始している必要はありませんが、人員の配置には目途が立っている状態にしておきましょう。
    設備基準については、事前相談の際には、事業所情報を提示する必要がありますので、設備基準を満たしているかどうかを慎重に確認しましょう。

  • 申請書類の作成と添付書類の収集
    自治体ごとに様式が異なっていますので、申請する自治体の様式を確認し書類を作成するようにしましょう。
    あわせて、勤務先(前勤務先)などに依頼が必要な実務経験証明や行政機関から取得する登記簿謄本などの添付書類を収集します。
    申請書類に不備などがあると申請が受理されない場合もあります。

  • 事前相談と本申請
    自治体ごとに事前相談・本申請の取扱いは異なっていますが、多くの自治体では、事前相談を行ったうえで本申請を行うという二段階の申請となっています。
    この期間に補正などを指示されることもあります。
    補正などの修正が遅れると、指定許可日が遅れてしまうこともありますので、迅速に対応するようにしましょう。

  • 面談若しくは実地調査
    実地調査は、各自治体ごとにある場合とない場合があります。
    面談や実地調査については、次の書類の提示などが必要となります。
    ・雇用契約書
    ・資格者証の原本
    ・各種マニュアル関連 など

  • 指定許可通知
    指定許可がおり、指定番号が振り分けられれば、営業を開始することができます。

指定申請の注意点

  • スケジュールの管理
    指定許可までは、約2~3カ月かかるため、 指定予定日に指定許可が取得できるように人員の確保、設備の整備、申請書類の作成・収集を行う必要があります。
  • 様式や必要書類
    同種の指定申請であっても、自治体ごとに申請書の様式や添付すべき必要書類などが異なっています。申請する自治体の定められた様式や必要書類にしたがって、手続きを進めていく必要があります。
  • 申請手順
    指定申請は、申請手順も自治体ごとに異なっています。開業予定日に指定許可が取得できるように、期日を守って申請手続きを行うことが重要です。予定通りの開業を目指して、正確に手続きを行いましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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